その9.砥川編



今回の釣行は丸二日の日程である。
昨日の小百川では彼等を自由にやらせて失敗した。
今日の午前中は厳しく指導して彼等がついてこれなかった。
だが、このまま終わるわけにはいかない。
彼等が駄目なら私がやろう。
決意を新たに、ここ砥川に場所を移した。

今度は失敗は許されない。
このままでは読者諸氏の期待を裏切ることになってしまう。
何より、この私が坊主では話にならない。
そのためには彼等三人がなんとも足手まといだ。
はっきり言えば邪魔だ。

そこで、彼等には基本練習を課することにした。
対岸の目標に向ってルアーを投げ込む。
私が戻るまでそれを何度でも繰り返してもらおう。
彼等のレベルには丁度いい練習だ。
その場所から一歩も動かぬようにと私は彼等に命じた。
彼等のヘッピリ腰の投てきを尻目に、私は上流へ向った。
暫くすると彼等の醜い姿は視界から消えた。
そして、美しい自然だけが私を取り囲んだ。
じつに清々しい。

これならいけると私は思った。
そして間もなく、あの気配がやって来た。
周りの木々の色も心なしか緑が深くなったように感じられる。
いた!
間違いなく原種山女だ!
私がルアーを投げ込むとそれは即座に反応した。
絶妙のタイミングで私は竿を跳ね上げた。
どうやら上手くフックできたようだ。
こうなれば、あとは手繰り寄せるだけである。
私ははやる気持ちを抑えてゆっくりとリールを巻いた。
少しずつ獲物が近づいてくる。
だんだんその姿がはっきりしてきた。
予想以上に大物だ。
そして輝くように美しい!!


ただ、手繰り寄せられたのは私のほうだったようだが・・・。


原種山女:KM種(37cm)




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