その71.入間川上流部(リターン)編


入間川にやって来た。
昨シーズンの終わり以来だ。
その時は不覚にもボウズであった。
リベンジの意味も込めて同じスロープから入渓した。
川に降り立つと大きなカエルが居た。
よく見るとそれは単なる岩だったのだが、
雌の妖力(嫉妬?)で岩に変えられてしまった雄蛙かとも思われた。
怖ろしい。
ともあれ、雑念を振り払って今日は釣りに専念しなければならない。
私は上流へと歩を進めた。
何投目かでアタリがあった。
即座に合わせ、手繰り寄せ、そしてネットに納めた。
昨シーズンのリベンジが果たせたと喜んだのも束の間、その姿を見て落胆した。
Who are you?
I am AYU.
それは鮎だったのだ。
鮎は鮎で美しい魚ではあるが、「山女釣り」においては外道と言わざるをえない。
出来ることなら、山女に変身してはくれないだろうか。
だが、岩に変わってしまっても困る。
途方に暮れていたその時だった。
「あんた、また来たの?今日は釣れてる?」
不思議な少女が立っていた。
「あんた、釣りが下手よね。私が手伝ってあげよっか?」
よく見るとカワイイ。
ここはひとつお願いしてみようか。
と思ったら彼女は消えていた。
「ジャジャーン!この格好はどう?」
さっきとは姿が変っている。
が、やっぱりカワイイ。
それにしても何者なんだ?
なぜ変身できるんだ?
ひょっとすると、雄蛙を岩に変えたのは彼女ではないのか?

原種山女達:(HR)種(0cm)
これ以上関わり合うのは危険かもしれないと思った時、もう彼女の姿はなかった。
待っていても二度と現れなかった。
一連の出来事が幻のように思えてきた。
川は普段と同じ様に流れている。
さあ、釣りはこれからだ。
バンバン釣るぞ!
私は気を取り直して立ち上がり、足元に目を遣った。
そこには美しい山女がいた。
 
 
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