その61.都幾川編


久し振りに都幾川にやって来た。
ネットで調べたところ、遊漁券はキャンプ場で販売しているとのことであった。
券代とともに駐車料金もセットで支払わされた。
そういう仕組みなのだそうだ。
駐車場の前が細かく区分けされたファミリー釣り場になっている。
まだ朝早いということもあって客の姿は見えない。
家族連れで混み合わないうちに上流へ向かうことにする。
不調だ。
釣果のないまま長い時間が過ぎていく。
それでも上流へと向かう。
そして、歩き疲れた私の前に堰堤が立ちはだかった。
満遍なくルアーを放り込むがアタリはない。
更に上流へと進むが状況は芳しくない。
そうこうするうちに次の堰堤が行く手をさえぎる。
今度の堰堤は背が高い。
ここで結果を出せなかったら引き返すしかない。
必死にルアーを投げ入れるが、アタリどころか魚の気配すら感じられない。
私は途方にくれた。
そのとき、右前方から明るい声がした。
「こっち、こっち!ここに投げればいいよ!」
気を取り直した私は素早くルアーを投げ入れる。

原種山女:AY種(26cm)
いつもの私が蘇った。
数分の格闘の末、本来の私に相応しい良形を釣り上げることができた。
とはいえ、これも優しい手助けがあってのことだ。
ぜひとも声の主にお礼を言わなければならない
「アリガト・・・

しかし、もうそこに人の姿はなかった。



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