その59.湯の湖編(3)


三瓶、爆笑王、釣銭の三名が、久し振りに湯の湖でその腕を競い合うことと相成った。
前日に日光入りした三瓶は、必勝を祈願するべく輪王寺へと向かったが、
参拝料がかなり高額なのを嫌気して日光駅方面に引き返した。
宛てもないままに通りを彷徨っていると「観音寺」という寺に出くわしたため、
そこで安上がりに祈願を済ませた。
競技会当日は良い天気になった。
開始早々、釣銭が一尾釣り上げた。
久し振りの釣果とあって、もう彼は十分に満足した様子であった。
それ以降、彼に更なる釣果は無かった。
足るを知る者は幸せである。


原種山女:K種(21cm)
昼を過ぎ、爆笑王にも釣果があった。
いつもの如く、あらゆる裏技を駆使しての一尾だった。
苦労しただけにリリースがためらわれる様子だった。
結局その後もビクに入れたまま連れ回した。
人が執着心を捨て去ることはとても難しい。


原種山女:MM種(38cm)
日も暮れてきた。
三瓶にまだ釣果は無かった。
アタリすら全く無かった。
だが、三瓶の表情に変化は見られなかった。
ただ淡々とルアーを投げ続けた。
今出来ることだけに集中している様子だった。
日没が迫った頃、ようやくその努力は美しい出会いとなって実を結んだ。


原種山女:OY種(23cm)
その一尾をきっかけとして、三瓶は次々と釣り上げた。
力むことなく、ただ成り行きに身を任せていた。



原種山女:GA種(20cm)
終わってみれば三瓶の圧勝だった。
その結果自体はいつものことだが、精神面の成長には目を瞠るものがあった。
何か特別な修行を積んできたのだろうか。
それとも昨日の参拝の効果が現われたのだろうか。


そういえば・・・・・・、観音寺の門前にはこんな標語が掲げられていたのだった!
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