その49.大血川編(上)


大血川。
此処は、釣りを始めて間もない頃の三瓶が、
ボウズの爆笑王を尻目に大岩魚を釣り上げたという川だ。
はたしてどの程度の川なのか?
入渓点を見定めると、私は一気に斜面を滑り降りた。
降り立った場所は木々が覆いかぶさる早瀬だった。
荒々しさの中に張り詰めたものを感じる。
この川はなかなか手強そうだ。
私は様子を探るようにルアーを投じた。
何投目かで中ぐらいのヤマメを得た。
そして、徐々にではあるが流れの癖も掴めてきた。
あとは落ち着いて自分の釣りスタイルを貫けるかどうかだ。
私は上流へと向かった。
一時間ほど歩くと、怪しげな雰囲気が漂ってきた。
日は陰り、流れの色は深みを増した。
本能的に危険を察知した私は、大きく脚を開いて身構え、
ルアーを手持ちの中で一番重いものに取り替えると、
渾身の力を込めて深みの中心に投げ入れた。
S字を描くよう泳がせたルアーに強烈なアタリがあり、私は反射的に体をのけ反らせた。
しかし次の瞬間、さらに大きな力で引っ張られた私は思わず前屈みになる。
負けてなるものかと、私はまたさらに大きな力で引き戻す。
これ以上引いたらラインが切れてしまうと思われたその時、川が割れた。
と同時に大きな黒い物体が立ち現れた。
ダッ、ダイマジンだ。
子供の頃に映画で見た大魔神が目の前に立ち塞がっている。
まさか大魔神と対決することになろうとは夢にも思っていなかった。
だが、このような状況になった以上、相手が誰であろうと私は負けるわけにはいかない。
地上最強の名にかけて!
しかし、相手の腕力は予想以上に強い。
こちらが背筋をフル活動させても竿を跳ね上げることは困難だ。
私は徐々に引き寄せられる。
このままの引っ張り合いでは勝ち目は無い。
私は一気にラインを緩めると、相手のふところ目がけて飛び込んだ!!
脳髄に電気が走った。
そして目の前が真っ暗になった。
それからどの位の時間が経過したのだろうか。
気が付くと辺りは静けさを取り戻していた。

どうやら勝敗は決したようだ・・・・・・

原種山女:EK種(27cm)




080913
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