その43.薄川編


午後になると日は翳りはじめた。
近くの廃屋にウエイダーを脱ぎ捨て、私は駆け足で川沿いの道を下ることにした。
雨が降り出さないうちに、去年の夏にそこでの再会を約束した小橋に辿り着くのだ!
川がまだこんなに低く見える。
小橋はずっと先だ。
息が苦しい。
鼓動も激しく打ち付けてくる。
でも、ずいぶん川面が近くなってきたからもう間もなくに違いない。
あと一息だ、がんばろう!
何としても約束を守るんだ。
ひと粒ふた粒と路面に黒い染みが出来はじめた頃、ようやく約束の小橋が見えてきた。
はたして彼女は居るだろうか。
約束を憶えていてくれただろうか。
彼女は居た。
私を信じて待っていてくれた。
私は喜びで胸がいっぱいになった。

原種山女:IS種(17cm)
さあ、川を下ろう。
二人で海を目指すんだ!

We've only just begun ...




070915
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