その36.大芦川編


久し振りに三瓶、爆笑王、釣銭の三人を従えての釣行である。
ここ大芦川は4年前に訪れている。
あの時は散々な結果に終わったので、
その記憶が彼らを萎縮させなければいいのだがと思いつつ、
二人の後姿を見るとやはり自信がなさそうである。
暗い。
どんよりと空気が重い。
そして全く釣れそうにはない。
見ている私も気が滅入ってしまう。
その頃、三瓶は一人で強烈な川の流れと格闘していた。
前回の失敗を糧として、前向きに立ち向かっていこうという意欲が感じられる。
彼にだけは期待してもよさそうだ。
と、その瞬間、三瓶が釣り上げた。
良形のヤマメである。
もしかすると、原種ではないだろうか!?
「ばあ〜っ!」
残念ながら、その正体は年老いた河童だった。
爆笑王が単独で竿を振りはじめた。
だがやはり釣れそうにはない。
疲れた体を引きずりながらポイントを移動する爆笑王。
そして、危うく岩場から転落しそうな爆笑王。
「ケラ、ケラ、キャッキャッ、ケラ、キャッキャッ!爺さんみたい!」

                             原種山女:HA種(22cm)
思わず涙ぐむ爆笑王。
「釣らせてくれ。お願いだから釣らせてくれ!」
なりふり構わず大声で懇願する爆笑王。
哀れだ。
「洗濯は腰の構えが大事なんだよ、爆笑さん!」

                             原種山女:UR種(24cm)
一方、釣銭も新たなポイントを求めて移動していく。
その姿は、まるで地獄への階段を降りていく罪人のようだ
哀愁漂う、その後ろ姿。
虚ろな目をして流れをさかのぼる。
切ない。
当然の結果だが、やっぱり釣れなかった。
がっくりと肩を落とす釣銭。
「人生長いよ。元気出しなよ、釣銭さん!」

                             原種山女:IY種(20cm)
ふたたび合流した爆笑王と釣銭。
沈黙が辺りを支配する。
二人にもうこれ以上竿を振るエネルギーは残っていない。
そろそろ引き揚げる時間だ。
「もうお帰りですか?お疲れ様でした。
気が向いたらいつでもまたお越しくださいね。
お待ちしています!」

                             原種山女:SW種(26cm)
二人とも元気を出しなさい。
また来ればいいじゃないか!
そしてなにより、今日一日、君達は本当に沢山のものを釣り上げたのだから・・・




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