その30.日光湯川編(3)



三度目の湯川は雨に煙っていた。
川の流れは濁りを増し、勢いを増し、捻るように通り過ぎてゆく。
まだまだ未熟な爆笑王では釣りにもならない。
それは釣銭とて同じこと。
何度もラインを結び直すことで空虚な時間をやり過ごしている。
三瓶でさえ、コンスタントに釣り上げはするものの、全てがブルックトラウトだ。
原種山女の気配は全く無い。
あいかわらず爆笑王は流れに入ろうともせず、しきりにリールをいじくっている。
道具のせいにして欲しくはないが……。
正攻法では無理だと悟った釣銭は、何か考えが浮かんだようだ。

釣銭「ほれほれ、この握り飯をあげよう。その代わりお前の力を貸してくれないか。」
カモ「お安いご用よ。それにしてもこのオニギリは美味しいね。」
釣銭「そうだろ。セブンイレブンの鶏五目は美味いんだ。」
カモ「ところで、私はいったい何をすればいいの?」
釣銭「なあに、ちょっと私と一緒にこの先まで行って、山女を捕ってきてもらいたいんだ。」
カモ「訳もないことだわ。」
釣銭「それにしても、お前のめくれ気味の嘴はカワイイなぁ。」
カモ「ウフフッ・・・」
その先の小さな滝に爆笑王はすでに居た。
訳も分からず、ただひたすらルアーを投げ込んでいる。
哀れだ。
追いついた釣銭は、この時とばかりに叫んだ。
「カモちゃん、よろしく!」
「あれれれっ、カモちゃん、どしたの?何処へ行っちゃったの?」
「オ・バ・カ・サ

原種山女:AH種(21cm)




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