その23.男鹿川編(下)



爆笑王と釣銭がサシで勝負をするという。
そしてこれは今シーズンのランキングを左右する重要な戦いだ。
二人の実力はどっこいどっこいだから、低次元の戦いではあるが、それはそれで面白い。

爆笑王は早速ルアーを投げ入れた。
「今、アタリがあった!チックショウ〜!」
爆笑王はいつものように大声で口三味線を入れて釣銭に揺さぶりをかける。
これはなかなかに効果がある。
釣銭はこのプレッシャーに耐えねばならない。
そんな時、釣銭は自分のそばに特別な気配を感じ取った。
何かがいる。
何者かがこちらを見ている。
無防備に、そして緩やかに近づいてくるその姿を見て、
釣銭はようやくそれが原種山女であることに気が付いた。
千載一遇のチャンスである。
原種山女が自分からこんなに近寄って来ることなどめったにないだろう。
あまりの好機に慌てた釣銭がやっているのはもはや釣りではなかった。
釣竿もラインもルアーも関係ない。
腰をかがめると彼は素手で彼女を捕まえにかかった。
無我夢中だった。
常識なら考えられないことであった。
しかし、幸運にも釣銭は彼女の捕獲に成功したのである。
それは見事なまでに伸びやかに育った原種山女であった。
釣銭は興奮のあまり気を失いかけていた。
そして、「夢なら覚めないでくれ」とただただ願うのであった……。

原種山女:EM種(40cm)




050610
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