その13.奥多摩 海沢編



  ちょっと時間ができたので釣りに行くことにした。
  特別な準備もせず車に乗り込んだがこれといって目的地が思い浮かばない。
  仕方なく、とりあえず奥多摩方面に車を走らせることにした。
  アメリカキャンプ村を抜けて海沢に着いたのはもう昼近くだった。
  竿とリールとルアーだけを手に持つと、私は橋のたもとから沢に降り立った。 
  しばらくして釣果を得た。
  小さなヤマメだった。
  それは良いのだが無性に腹が減ってきた。
  そういえば今朝から何も食べていない。
  それに喉も渇いてきた。
  飲み物くらいは買っておくべきだった。
  とはいえ、もうどうしようもないので私は先へと向かった。
  しかし空腹と喉の渇きで意識を釣りに集中することができない。
  私はただ機械的に手足を動かすだけとなった。
  一時間ほど経過した頃、大きな堰堤が行く手を遮った。
  水深も深く、さすがの私ももうこれ以上は先へ進めない。
  ここで引き返すしか方法は無いだろう。
  こんなことなら一匹釣ったところで上がっておけばよかった。
  私は情けなく滝下を見つめた。
  そこには美しい原種山女が佇んでいた。
  そして彼女は言った。

  「ご釣行は計画的に!」
原種山女:YM種(22cm)




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