その8.小百川某支流編(2)



昨日の黒川は最悪だった。
なにより彼等に自由にやらせたのが失敗だった。
今日は厳しく指導をしようと思う。

今日のフィールドは小百川某支流。
昨年、私が立派な原種山女を仕留めた場所だ。
しかし、彼等にとっては少々タフかもしれない。
案の定、深みにさしかかると三人は立ちすくんでしまった。
爆笑王が撤退の号令を掛けている。
釣銭も既に逃げ帰ろうとしている。
火玉小僧はハナから深みに近づこうともしない。
こんな奴らが私の弟子なのか・・・。
情けなさを飲み込んで私は檄を飛ばした。
怯むな、進め!
さすがに私の命令は絶対である。
踵を返して釣銭が流れをさかのぼり始めた。
だが、彼の動きが尋常ではない。
妙にアクションが派手だ。
バチャバチャと水音がうるさい。
そして、何かブツブツつぶやいている。
もしかして恐怖で気がふれたのか?

ポイントの真っ只中を釣銭は音を立て進み続ける。
原種山女が群れているというのに!

やはり彼は正気を失っている。
ついに彼はエヘラエヘラと笑い出した。
完全に逝ってしまっている。
このままでは危険だ。
私はひとまず撤退する決断をした。




040425
inserted by FC2 system