その4.湯の湖編



いつもの3名を引き連れて湯の湖にやってきた。
それにしても火玉小僧にやる気はあるのだろうか?
岩の上に座ったままつまらなそうに惰性でリールを回しているだけだ。
とても教えを受けるという態度ではない。
爆笑王はどうかというとこれまた岩の上でふてくされてダラダラやっている。
まったく釣れないから面白くないのだろうが努力しないで上手くなれる訳がない。
こんな調子ではいくら私が声を嗄らして指導をしても意味がないだろう。
いつになるか分からないが彼等に自覚が芽生えるのを待つとしよう。
彼等二人に比べて今日の釣銭には感心させられる。
腰まで水に浸かり、朝から一生懸命にルアーを投げ続けている。

そのひたむきな後姿に私も目頭が熱くなった。
精一杯の努力にもかかわらず今日もまだ釣果がない。
彼には学習効果というものがないから同じことを繰り返しているだけだからだ。
しかしその努力が報われる時は必ずやってくるだろう。
いや、私がきっと釣らせてみせる!
そして、4126度目のルアーを投げ込んだ時である。
5回ほどリールを巻き上げたかと思うと釣銭の竿が大きくしなった。
これは大きい。
30分ほど格闘の末、私も手伝ってようやく獲物を手繰り寄せた。
山女だ。
それも正真正銘の原種山女だ。
私は我がことのように嬉しかった。
原種山女:OA種(20cm)
釣銭に刺激されたのか、爆笑王も一匹釣り上げたようだ。
釣ったのはよいが、
空中に持ち上げたり水に浸けたりしていっこうにリリースする気配がない。
そんなことを繰り返しながら10分ほど経過した。
もういいかげんリリースするだろうと思って見ていると、
またこちらに向かって獲物を誇示するように差し上げた。
そしてそのまま懐に右手を差し入れた。
カメラを取り出す気らしい。

あんまりだ。
もういいかげんリリースしてやれ!
私は爆笑王に詰め寄った。
慌てた爆笑王は獲物を下に落とした。
見ると、糸にウキが付いている。
怪しい!
不正の臭いがする!!


ともあれ、泥まみれになったその獲物は紛れもない原種山女なのであった。
原種山女:MM種(29cm)




030906
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