岩魚堂書房


釣の上達に実践は欠かせない。
九割九分は実践の結果であるとも言えるだろう。
しかし、ただがむしゃらにフィールドに出るだけでは進歩は望めない。
時には先人の経験に学ぶこともまた必要であろう。
もちろん、大山先生の直接指導に勝るものはなかろうが、全員が常に個別指導を受けるというのもまた無理な話である。
そこで、諸君の座学独習の一助にしてもらうべく、ここに釣書籍専門店『岩魚堂書房』を開店した次第である。
幸いにも、書評は大山先生ご本人から頂戴することができた。
積極的に購入し、修行に励んでいただきたい。

「魚の釣り方」は自分で考えろ
泉忠司(著)

人に教えを乞うのではなく自分の頭で考えよ。
でなければコトの真髄は身に付かない。
当たり前のことである。
だからこの本を読むか読まないかも自分で考えていただきたい。
渓のおきな一代記
瀬畑雄三(著)

“渓のおきな”の愛称で親しまれている著者が、その少年時代から古稀をむかえた現在までを綴る自伝。
山女たちとの出会い、釣友や家族のこと、源流釣りの醍醐味、そして分け入る渓や森への思いを自在に書き尽くした。
みすず書房からの出版は、これが単なる趣味本ではないことを物語る。

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス)
ポール・トーディ(著), 小竹由美子 (翻訳)

釣りを愛するイギリス国民の間で40万部のベストセラーを記録した快作。
2007年に本作でデビューした著者トーディは、60歳にして遅咲きのベストセラー作家となった。
釣りもそうだが何事も情熱を維持することが一番大切なのである。
年齢に関係はない。
川に死体のある風景 (創元推理文庫)
歌野晶午ほか(著)

幸いなことに私は川で死体に遭遇したことはない。
死体になりかけたことはある。
本書は綾辻行人・有栖川有栖・歌野晶午・大倉崇裕・佳多山大地・黒田研二の6名が川を舞台に描くミステリ・アンソロジー。
世界怪魚釣行記
武石憲貴(著)

1999年、会社を辞めた著者は未だ見ぬ怪魚を求めてインドへと旅立った。
その後、さらにアジア・南米・アフリカ・オセアニアを放浪する。
巨大怪魚を追い求めたその放浪は総日数1386日・26カ国におよぶことになる。
夢枕 獏 五大陸釣魚紀行 愚か者の杖
夢枕獏(著)

雑誌「食楽」での連載をまとめた釣魚紀行本。
五大陸6カ国をカメラマン・佐藤秀明とともにめぐる。
追いかけたのは、海の獅子、川の怪物、汽水域の猛魚、珊瑚礁の魚王、絶海の天魚、サバンナの獣魚だ。
本書は新しい「オーパ」かもしれない。
オーパ (集英社文庫 122-A)
開高健(著)

釣師の間ではあまりにも有名な本書。
ゆえにこれまでここで紹介することはなかったが、やはり必読書ということで掲載する。
トクナレやドラドなど、名魚・巨魚・怪魚を求めて褐色の大河アマゾンに挑んだ60日、驚異の16,000キロ。
できればやはり「Amazon」で購入していただきたい!
溺れる魚 (新潮ミステリー倶楽部)
戸梶圭太(著)

魚が溺れる?
私が坊主で終わるようなことを意味するのだろうか?
だとしたら著者の釣行記なのか?
いや、どうやら二人の不良警部補を軸とした娯楽小説であるらしい・・・
川は生きている―川の文化と科学 (ウェッジ選書)
森下郁子(編著)

日本の川は短い。
尾根と海岸線との距離が近いからだ。
それでも川は流域の人々に豊かな恵みをもたらし、多様な文化を支えてきた。
工学博士でもある著者は、川文化を科学的な視点で見ることにより将来に受け継ぐべき川の姿を探る。
ネパール釣り紀行 人生を激変させた『神の魚・サハール』
小林龍彦(著)

タイ・バンコックのとある古書店で偶然手にとったガイドブックに載っていた「神の魚・サハール」。
著者はその巨大淡水魚に魅せられてしまう。
そして「神の魚」を求めて出向いたネパールで著者を待っていたのは、圧倒的な大自然と心優しき人々だった。
著者の人生をも変えてしまったネパール釣り紀行。
魚神
千早茜(著)

第21回小説すばる新人賞を受賞した幻想小説。
題名は“いおがみ”と読む。
著者である千早茜氏の小説家としての現時点の実力は、デビューほやほやの頃の三瓶程度かもしれない。
今後を期待している。
森に眠る魚
角田光代(著)

「私が築きあげた愛しい日々は、もう戻らないのだろうか。
・・・凄みある筆致であぶりだした母親たちの深い孤独と痛み。」 (081214付、朝日新聞の広告より)

ここで、“母親”という言葉を“釣師”に置き換えてみるがいい。
あるいは、“天才”という言葉でもよい。
まさしくそれは私を主人公にした物語でもあろう。
涙でリールが見えない
RYO from ケツメイシ(著)

釣りの苦労話かと思いきや、表題にある“リール”とはパチスロでぐるぐる回っている絵柄部分のことを言うらしい。
内容は「ケツメイシ」のMCであるRYO氏が携帯サイトで連載していたコラムを一冊の本にまとめたものであった。
私は勘違いをして手にとってしまったのだが、
爆笑王や釣銭を見れば分かるように、釣り師も涙でリールが見えなくなることはよくあることなのだ。
読んで損はない一冊だろう。
川物語―写真集日本の川を旅する
佐藤秀明(著)

20年ほど前、雑誌の連載でカヌーイスト野田知佑氏の文章とともに誌面を飾ったカメラマンの写真集である。
日本国内の11の川を巡る。
川が一時も同じ姿を留めることがないように、川の暮らしもまた日々移ろいゆくものだ。
佐藤のカメラは、失われていくその姿を捉えていた。
川で出会うのは山女たちだけではない。
浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌
金森直治(著)

著者の金森は釣り史研究家として知られ、これまでに収集された資料や文献等は国内随一の質・量を誇る。
そして本書には、30数年にわたって集めた「釣りの浮世絵100景」が収められている。
色鮮やかに描き出された浮世絵であるが、どれもこれも登場人物の手には釣竿が握られている。
よくもこんなに集めたものだと感心してしまう。
残念なのは、そのコレクションの中に水着姿の山女たちがいないことだ。
無敵のマーケティング 最強の戦略
ジャック・トラウト(著), 高遠裕子 (翻訳)

世界13カ国の主要企業のマーケティングを手がけたトラウトが、自身のマーケティング戦略をまとめた書。
以前の著作である『マーケティング22の法則』の実践編ともいえる。
氏とは考え方を異にする部分も多いが、その実績を考慮すれば無視はできない。
目を通しておく必要はあるだろう。
No Image 垢石釣り紀行
佐藤垢石(著)

「釣竿を持つには、まず邪念があってはいけない。山川草木の一部分であれと念じなくてはいけない。」
佐藤垢石はそのように釣師の心得を説いた、井伏鱒二の釣の先生である。
釣師である以前に、無類の酒仙であった彼は、波乱に満ちた人生を送るが、
のちに鈴木晃、志村秀太郎らとともに「つり人社」を起こし、雑誌『つり人』を創刊する。
本書は、その垢石の代表的な著作の一つである。

アライヴ・アンド・イン・ラヴ (紙ジャケット仕様)
スー・レイニー(歌)

今回は書籍ではなく、特別にCDをご紹介する。
これは、50年代にデビューし西海岸で活躍した美人ジャズシンガー、スー・レイニーが1966年に発表した作品。
バート・バカラックなどのナンバーをソフトロック的にアレンジしたサウンドが心地よい。
修行の合間の気分転換にも良いだろう。
とにもかくにも、このジャケット写真は必見である。

釣女
平岩弓枝(著)

著者の捕物帳としては「御宿かわせみ」が有名だが、これは花房一平を主人公としたもう一つのシリーズである。
「釣女」はここに収められた6篇の短編のうちの一つである。
はたして、釣女とは何者なのか?
ルアーフィッシングをする女性釣師か、はたまた新種の山女か?肝っ玉かあさんか?
地上最強への道―大山カラテもし戦わば
大山倍達 (著)

この中で大山氏は自らの戦歴を振り返りながら様々な相手との戦い方を論じている。
柔道家やプロレスラー、プロボクサーといった異種格闘技はもちろんのこと、
虎やライオンや豹、牛や熊やゴリラへとその相手は広がっていく。
しかも、それらは冗談や妄想では全くなく、極めて真剣かつ本気の議論なのである。
鱒との対戦がないことが唯一惜しまれる。

cover 魚との知恵比べ―魚の感覚と行動の科学
川村軍蔵(著)

著者は水産学博士で魚類行動生理学・漁具漁法学の専門家である。
魚の視覚・聴覚・嗅覚と行動に関する漁師・釣り師の経験則の真偽が、地道な研究によって検証されている。
魚が好む色はあるのか?魚の形状識別能力は?内耳と側線の役割は?
それでも未解明の部分は多いのであるが、少なくともわが門下生より魚の知恵が勝るのは間違いない。

川釣り (岩波文庫)
井伏鱒二 (著)

井伏鱒二は釣の名手として知られている。
本名は満寿ニであるから、私との共通点も多い。
自身の釣体験に想いをめぐらせながら書かれた随筆や短編小説は、人生そのものをやさしく映し出している。
直木賞受賞作である『ジョン万次郎漂流記』や『山椒魚』『黒い雨』へと読み進めてみるのもよいだろう。

cover 釣魚大全 地球人ライブラリー
アイザック・ウォルトン (著), 立松和平 (翻訳)

出版されたのは17世紀。
以来、“釣の聖書”として世界中の釣り人によって読み継がれている。
井伏鱒二氏も上記の『川釣り』のなかで本書を読んだことを記している。
当時のことであるから技術面では三瓶にも及ばないが、釣哲学としての奥深さが読者を惹きつけるのであろう。
No Image 鱒 ヘミングウェイ釣文学全集
アーネスト・ヘミングウェイ (著), 寺田和夫 (翻訳)

若き日のヘミングウェイはヨーロッパ・北米の山野に鱒を追い、さらには中南米・アフリカの海で鮫や鯨に挑んだ。
孤独な魂の軌跡を綴った短編と、鱒釣への情熱を語るエッセイを収める。
これらの体験が後の傑作『老人と海』へと繋がっていく。

cover スペインの鱒釣り
木村栄一 (著)

著者は神戸外大のスペイン語教授で、ガルシア・マルケスなど中南米文学の翻訳者としても活躍している。
相当の釣りキチである。
今回は憧れのブラウントラウトを求めて、ヘミングウェイの釣り場でもあったスペイン深奥へと分け入った。
アメリカの鱒釣り (新潮文庫)
リチャード・ブローティガン (著), 藤本和子 (翻訳)

釣に関するエッセイだと思われるかもしれないが実は全く違う。
(高田馬場の“芳林堂書店”で趣味/釣の書棚に並んでいるのを目撃したが)
著者はアメリカの小説家・詩人で、60・70年代に一風変わった作品を世に出し、49歳でピストル自殺をした。
そういえば、たしかヘミングウェイも銃で自殺をしたのではなかったか・・・

cover 大山倍達、世界制覇の道 (角川文庫)
大山倍達 (著)

これは解説不要であろう。
押忍。

cover 魯山人味道 (中公文庫)
北大路魯山人 (著), 平野雅章 (編)

三瓶はこの本で“料理の道”と“食の心”を学んだ。
彼が湖畔で作る粕汁の原点はここにある。
イギリスの鱒釣り―川ととも...
フランク・ソーヤー (著), 倉本護 (翻訳)

イギリス南部、エイヴォン川のほとりで生涯を河川管理者・水生生物観察者として過ごしたフランク・ソーヤー。
フライフィッシングをやられる方は、ソーヤーニンフの創始者といえばピンとくるかもしれない。
彼は言う。「自然は干渉されることに激しく憤る。私の仕事は自然の手助けをすることである。」
1980年に74歳で亡くなった彼は、私と同じく“伝説の鱒釣り師”と呼ばれている。
『フランク・ソーヤーの生涯−伝説の鱒釣り師』も併読されたい。

cover 日光鱒釣紳士物語
福田和美 (著)

かつて爆笑王によって紹介されたことがあるため悪い印象が付きまとうが、なかなかの良書である。
先入観を捨てての一読をお勧めする。
特に“ふぃふぁ山荘”に宿泊する際には楽しみが増すであろう。
ただし、爆笑王を見れば分かるように、読んだからといって上手くなれるわけでも、紳士になれるわけでもない。
cover サケ・マス魚類のわかる本 ヤマケイFF"CLASS"シリーズ
井田斉, 奥山文弥 (著)

著者の一人である奥山文弥氏はフィッシングジャーナリストとして有名だが、本書は釣りの本ではない。
サケ科魚類を理解するための学術的な著作である。
井田氏は奥山氏が北里大学水産学部に学んだ時の魚類学の先生であり、師弟での共著ということになる。
魚類学の知識は“考える釣”を実践する上で非常に役に立つ。
釣銭や火玉小僧など初心者の技術向上には、同じく奥山文弥著『ルアーフィッシングマニュアル』をお勧めする。
cover パブロフの鱒 海外シリーズ
ポール・クイネット (著), 森田義信 (翻訳)

著者はワシントン医科大学で教鞭をとる臨床心理学者にして人気エッセイスト、そして無類の釣り好きである。
その心理学者としての眼が釣り人の生態と心の動きをユーモラスに分析する。
爆笑王がいつも虚言を弄するのは何故なのか・・解明の糸口がつかめるかもしれない。


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